踏みだし、つながり、広がる。
「学ぶ」の語源が、人の行いを真似すること。
「真似る」が転じて「学ぶ」になったということは、よく知られた話かもしれません。
「地域探究」もそうですが、
いざ何かを進めていこうと思ったときに、
「こういう風にやっていくと良い」といった、手近な「教科書」のようなものがないものでしょうか。
そんな都合のよいものが必ずあるとは限らないのが、世の常でしょう。
「無知の知」の実感。
身近な場所にヒントがなければ、助けのようなものがなければ、それを続けることをあきらめるしかないのでしょうか。
いやいや。
それならそうで、自分から「学び」の場を外に求めてみる。
そんな考えに行き着いたのも、答えの無い「問い」と日々向き合い続ける『猪苗代学』のおかげかもしれません。
話は変わりますが、
昨年度は、一般社団法人法人BridgeforFukushimaさまにコーディネートしていただきながら、「先進校視察」として東北地方の2校に足を伸ばしました。
宮城県石巻西高校。
岩手県立大船渡高校。
それぞれに「地域」というキーワードを盛り込みながら、特徴的な学びを実践されている学校です。
足を運び、そこで触れたいくつかの「学び」は、
しっかりと『猪苗代学』での活動に活かされています。
「やはり大人だって、学ばなければならない」という思いを強くした、大切な機会となりました。
何よりも、それまで「知らなかったこと」を「知る」って、やっぱり良いなあと思います。
「探究心」? が最も適当な言葉なのかどうかは知りませんが、「知りたいと思うこと」こそが、まさに「学び」の根幹と言えるのではないでしょうか。
同時に大切になってくるのが、そのことを「知らない」自分についても「知る」という視点。
「無知」である自分自身を客観的に「認知」する。
そう、「無知の知」とかいうあれです。
学ぶための、何かを吸収するためのスタートラインに立ったような。
そんな状態をそう呼ぶのでしょう。
昨年度の視察にて感受したたくさんの学びと刺激。
私たちにとって、自分たちの「学び」を再確認する大切な時間にもなりました。
そしてーー。
その充実した忘れがたい時間を思い返しながら「『先進校視察』、今年度も実施できたらよいなあ」と、各学校のホームページをながめます。
実際に選定をはじめることができたのは、11月頭の『学びの収穫祭』が終了して以降のことでした。
「いきなりの問い合わせ、失礼いたします。」
「来月だったのですが、大人3名でお邪魔してもよろしいでしょうか?」
なんて、不躾(ぶしつけ)なお願いを聞いてくださる学校なんて、なかなかありません。
まあ、あるかもしれませんが、社会のルールとしては相当に失礼なこと。
もっと計画的に進めるべきであったと大いに反省しております。
ともあれ、時間は有限。
後ろめたさと不安とを抱えながらのアポ取り作業となりました。
『那須まち人物図鑑』@栃木県立那須高校
2024年12月11日(水)。
教頭を含めた教員3名は、雪の猪苗代を飛び出し、北関東のとある学校へと向かっていました。
こちらの無理なお願いを快くお聞きくださった一校目の学校が、栃木県那須町にある那須高校さま。
猪苗代高校と同じように「観光の町」に建つ高校としての側面も持ちながら、地域との協働にも力を入れている学校です。
お邪魔したこの日は、生徒たちが地域に飛びたし、町の名プレイヤーたちにインタビューをするという大切な日。
そもそも、なんでインタビューなんかするのだろう?と思ったら……
そう、それは那須高校の探究における大きな取り組みの一つ。
地域の魅力あふれる人物たちについてまとめた『那須まち人物図鑑』の製作のため。
すでに「第3刊」まで発行され、地域内外でも話題となっているそうで。
何よりも、そのクオリティにはとてもとても驚かされました。
いや、これはすごい。
現在「第4刊」の完成を目指して、生徒たちは町外へと活動のフィールドを広げており、この日もまさにそのフィールドワークの真っ只中。
そんな大変お忙しいスケジュールにも関わらず、探究を担当されている竹林先生やコーディネーターの皆さま、とても丁寧に対応くださいました。
改めて感謝申し上げます。
那須高校としての取り組みや「地域との協働」を実践する際に生ずる成果や課題等について、じっくりと話をお聞きすることでき、とてもとても実りの多い時間に。
さらに、さらに。
それだけでも十分にありがたい収穫ではあったのですが、
この日に実施されていた、生徒による「校外でのインタビュー活動」にも一部帯同させていただけることになりました。
・・・・・・嬉しい。
いや、本当にすみません。
学びを支える「地域」の理解
もちろん、このインタビューは『那須まち人物図鑑』第4巻を作成するための貴重な時間。
「とにかく、生徒さんの邪魔にならないように」。
訪問者3名、全神経を集中させながら自分たちの存在を消すよう努めます。
が、結果として「普段とは違った緊張感のある空気づくり」に一役買ってしまったような気もします。
ーー猛省。
ただでさえ緊張をともなう大切なインタビューの時間。
生徒の皆さん、本当の本当にお邪魔しました。
でも、やはり、
帯同させてもらえて良かったというのが本当の思い。
一生懸命に質問を投げかける那須高校生の姿を見ながら、
「まだ形として世に出ていないもの」が形になっていく過程が、今まさに目の前にあることを実感します。
同時に。
きっとこういった瞬間こそ、生徒たちにとっては掛け替えのない学びになるのだろうなと、うらやましくも感じました。
インタビューの受け手でもある「JAなすの」の職員さん。
実は那須高校の卒業生でもあり、なんとも優しく穏やかな対応。
そういった意味でも、那須高校としての「学びの厚み」を感じる本当に素敵な時間となりました。
皆さま、本当にありがとうございました。
地域企業との協働探究@埼玉県立秩父高校
翌、12月12日(木)。
こちらの強引な訪問依頼を暖かく受け止めてくださった二つ目の学校。
埼玉県立秩父高校さまです。
実は、先に那須高校への視察が決まっていた関係で、
「その翌日にあたる12日にお伺いしたいのですが・・・・・・」という迷惑でしかない乱暴な問い合わせ。
にも関わらず、本当に快く視察を受け入れてくださいました。
改めて心から感謝いたします。
この日の秩父高校。
実は体育祭の開催日でもありました。
学校全体が、「探究」とはまた少し違った熱気に包まれていたように思います。
地域からの「クエスト」にどう応えるか?
管理職の先生方から、埼玉県における秩父高校の立ち位置とその歴史について丁寧にご説明いただきました。
地域の伝統校としての顔と、新たな試みにもしっかりと挑戦していく姿勢の両輪を確かに感じることができました。
貴重なお話、ありがとうございました。
続いて伺ったのが、探究を担当されている田中先生と各学年の先生方のお話。
学年ごとに取り組むべきプログラムに違いがあり、その「違い」が秩父高校生の責任感や主体性の育成に繋がっているのだろうと感じました。
地域企業の協力と理解の中で育まれる1年次としての取り組み。
2年次以降になると、今度は自分たちが「地域」を巻き込んで学びを深めていく。
充実したプログラム。
素晴らしすぎます。
こちらの「知りたい欲求」がますます高まったタイミング。
熱狂中の体育祭を無理に抜け出してきてくれたのは、1・2年生の探究グループ2班。
県での発表会を控えているという生徒たち。
特別に、用意していた発表を聞かせてくれました。
1年生は、自分たちの地域の「里山」を大切にしていこうという活動。
本当に1年生?
と疑いたくなるような活き活きとした発表。
「小さい頃の遊び場を、これからもずっと魅力的な場所として大切にしていきたい」
そんな素直な思いが感じられる発表でした。
2年生の発表は、地元の牧場からいただいた「ホエイ」を有効活用していこうという取り組み。
「ホエイ」とは、チーズを作る際に牛乳から分離される液体のことで、それらをどう扱うかは牧場にとっても大きな課題。
たしかに、
どうせ処分するのであれば、そこに新たな「価値」を見出せた方が良いに決まっていますよね。
「ホエイ」を活用したスイーツ作りは、今後も工夫を重ねながら展開していくそう。
もちろん、いくつもの課題と向き合いながらの活動にはなるのでしょうが、取り組みのその先を追いかけてみたいなと素直に感じました。
1年生、2年生。
どちらのグループも、地域課題を自分ゴトとしてとらえたすばらしい発表でした。
そして。
無理なお願いを快く引き受けてくれた生徒の皆さん。
そして先生方。
改めましてありがとうございました。
遠く福島から足を運んで、本当によかったです。
『猪』(い)の中の蛙、大海を知る。
地域の皆さまを先生として、活き活きと「学び」を進める学校が全国にはたくさんある。
そして、
「学び」の意味を信じて前向きに取り組む先生方がいて、黙々と自身の探究心と向き合う生徒たちがいる。
それは、外に向かって一歩 踏み出してみたからこそ知ることができたこと。
何よりも、一度できた学校間のつながりは「財産」であると勝手に感じています。
「つながり」から生まれた、そんな一つひとつの体験は、生徒にとっての新しい引き出しとなりーー。
きっと社会に飛び立ったその先で、何かの力になるはずです。
猪苗代町というフィールドのさらに外へと足を伸ばすこと。
JRを使おうが、オンラインであろうが違いはないでしょう。
留まるだけでは知ることのできなかった「新たな知見」に触れ、
そういった実感を心で身体で体感することができたこと。
これ以上大きな収穫はありません。
そう言えば、
秩父高校の教頭先生からのお話の中で、兼務されている別の県立高校での話として、「実は猪苗代高校への視察を考えていた」といったお話を頂戴しました。
候補に挙げていただけただけでもとても嬉しく感じましたし、ぜひぜひ次の機会には足を運んでいただきたいなと思いました。
猪苗代高校。
1月末には地域探究『猪苗代学』学習発表会が控えます。
日々の学びが積み重なるように、厳しさと恵みをもたらす雪がゆっくりと降り積もります。