猪の中の蛙、大海を大いに泳ぐ。
観光と農業の町、猪苗代。
そこに建つ町内唯一の高校が猪苗代高校。
「いなこー」なんて呼ばれかたをすることが多いでしょうか。
やりたいことはすぐやる。
北に磐梯山、南に猪苗代湖という最高のロケーション。
自然あふれるこの町で、地域を教科書に、地域の皆さまを先生として学びを進める生徒たち。
全校生徒数50数名。
とてもとても小さな学校です。
確かに、少ない人数だからこそ諦めなくてはならないこともあるにはあります。
一方で、少人数、小回りが利くからこそなんでもできる。
小規模校には、無限の可能性が秘められていることも また事実。
生徒が、教員が、やりたいと思ったことはいつだって始められる。
それって、とてもとても魅力的なことではないでしょうか。
本格的に大会を目指して部活動に汗を流す。
それも高校教育にとっては、とても大切なこと。
では、生徒数の少ない学校はどうしていったら良いのでしょうか。
「部活動」はあきらめたほうが良い?
いやいや、そんなことはありません。
猪苗代高校には、スキー部以外にも「総合スポーツ部」、「総合文化部」があるんです。
活動のルール作りだって「学び」の一つ
『eスポーツ』がやりたいと思ったら、大人とルールを決めてやれば良い。
「夏にオンラインの大会があるらしいんです」
どうぞ、どうぞ。
まずは一緒に大会要項を確認してみよう。
「私たち、放課後の時間を使って『ダンス』をやってみたいんです」
「校内で使っても良いスペースはありませんか?」
うん。
幸いスペースはいっぱいあります 笑
よし、じゃあまずは何曜日に活動していこうか。
『ストレッチ』について学べる時間があるんだけど、参加してみたい生徒いるかな?
「はい!やってみたいです!」
なんでも好き勝手にやれば良いのではなく、やりたいことがあるならしっかり大人とやりとりをする。
必要なルールを組み立てられたなら、安全に楽しく活動すれば良い。
「やってみたい」気持ちを前に進ませてあげられる環境が、小規模校の魅力でもあります。
「表現教育」に力を入れる理由
地域探究『猪苗代学』がスタートした翌年。
後を追うようにひっそりと開始されたのが、コミュニケーションワークショップを中心とした「表現教育」。
かれこれ今年度で4年目となる活動です。
地域探究にて、外からのたくさんの情報や経験をインプットする日々。
それはそれは刺激的で有意義な時間ではあります。
一方で、そんな日々得られる「学び」をしっかりと言語化し外に発信すること。
『猪苗代学』がスタートした当初、
生徒たちにとって、それらは大きな課題であったように感じました。
インプットとアウトプットのバランスの取れた学び。
数値化のしにくい「非認知能力の育成」を目指す猪苗代高校にとって、それはとても大切な取り組みの一つとなっています。
R6.12.20「教育フォーラム」への参加
猪苗代高校生。
中学生時代。
おそらく、積極的に前に出て発言することが得意だったという生徒は多くはありません。
ひょっとしたら、
「そんな『話し合い』の様子を輪の外から眺めていました」なんて生徒のほうが圧倒的に多いかも。
まあ、でも大切なことって「今がどうであるか」でしょう?
なんて思いを心の奥のほうにしまいながら、普段から生徒たちと接する日々。
そんな猪苗代高校にとって、「青天の霹靂」とも言える とてもありがたい連絡を頂戴したのは、去年の11月のことでした。
本校校長、
「ーーといった話をもらったけど、生徒たちきっと大丈夫だよね?
学校から一歩 外に出たときの生徒たちの様子を見てみたいんだよね」
「『ぜひ参加します』と連絡入れておくねー」
なんて話を、なぜか笑顔全開でされています。
はい、きっと大丈夫でしょう。
外の世界に踏みだしたときの猪苗代高校生。
うん、確かに見てみたい。
猪(い)の中の蛙、大海を大いに泳ぐ。
そんなわけで、令和6年度の「福島県教育フォーラム」。
実践協力校としてお声かけいただいたことに、心から感謝しながら、猪苗代高校生10数名、
師走の福島県庁にお邪魔いたしました。
NPO法人「PAVLIC」わたなべなおこさんによる「コミュニケーションワークショップ」。
福島大学 人間発達文化学類 小野原雅夫先生による「哲学対話」。
福島県が進める「豊かな学び」を、多くの皆さまにお伝えする機会として毎年開催されている「教育フォーラム」。
今年度は、その一部を県民の皆さまにも体験していただこうという主旨も加えて開催されました。
移動のバスの中で、生徒から
「先生、『哲学対話』ってなんですか?」なんて質問を受けます。
うん?
いつも君たちが探究や授業の時間にやっていることと一緒だよ。
自分が感じたこと、思ったことを伝えられるなら伝えればいい。
どう、できそう?
ーーわかったような、わからないような表情をする生徒たち。
「教育フォーラム」での「哲学対話」のテーマが『友達とは?』であることは、結局本番まで伝えることはありませんでしたが、なんとなく「大丈夫だろうな」という思いがありました。
本番。
ビート板の一つでも用意しておかなければ、
なんて大人たちの「少しの不安」はまったく不要だったようです。
県民の皆さま、教育関係者の皆さまと一緒になって、活き活きと大海を泳ぎ回る姿。
今回の記事で、「自分たちでルールを作ることが大切!」なんて話題を取り上げていることを知ってか知らずか。
勝手に「新たなルール」を加えながら、観覧席の皆さまにまで参加をうながす生徒たち。
そして、笑顔でそれに応えてくださる参加者の皆さま。
※後に、笑顔で応えてくださったその方が、県内のとある高校の校長先生だったと知り、大人だけが勝手に恐縮してしまうというおまけ付きです。
泳ぎ始めこそ、少し緊張した様子だった生徒たち。
それでも、自分なりの『友達とは?』という問いに対する答えを懸命に言葉にしていました。
うん、本当によく頑張っていました。
立派でございます。
帰りのバスを待つ間。
少し泣きそうな表情をしながら声をかけてくれた1年生の女子生徒。
「先生ー、最後話をふられるまで全然発言できませんでしたーー。
ずっと自分も『言わなきゃ、言わなきゃ』って考えていたのにーー」
そうかーー。
でも「言わなきゃ、言わなきゃ」ってずっと考えていたんでしょ?
それで充分じゃない。
ーーやはり、わかったような、わからないような表情をする生徒。
どんな参加の仕方が正解だったか。
きっと「こうすべきだったよ」なんてものはあるはずもなく、「もっとこうしたかったな」をしっかり持ち帰ってほしい。
ただ、ただ素直にそう感じます。
最後に。
いつも通りの笑顔で生徒たちの緊張を解いてくださいました なおこさん。
「哲学対話」初体験の生徒たちの発言を穏やかに引き出してくださいました小野原先生。
心より感謝申し上げます。
また、令和6年度「福島県教育フォーラム」の開催にあたり、生徒たちを最大限フォローくださいました福島県教育委員会 教育総務課の皆さまにも、重ねて感謝申し上げます。
ありがとうございました。
こういった機会を、町の小規模校として学びを重ねる猪苗代高校生に与えてくださる「福島県の学び」。
教育の懐(ふところ)の深さと豊かさを勝手に感じては、なんだか良いなあと思ってしまいます。
そしてーー。
さあさあ、次はなんでしょうか。
そうです、そうです。
「地域探究『猪苗代学』学習発表会」。
実は今週1月25日土曜日に開催されます。
バタバタの1週間になりそうですが、きっと生徒たちはここでも頑張ってくれることでしょう。
入場無料です。
来場希望の連絡もたくさん頂戴しています。
本当にありがとうございます。
まだまだ検討中の皆さま、
週末のスキー観光、温泉観光のスケジュールにちょこっと加えてみてはいかがでしょうか。
皆さまの来場、心よりお待ちしております。